経営者インタビュー

チャンスは現地にある ~IT業界としてミャンマーへ進出した先駆けの企業経営者に聞く(2/3) ミャンマー

2016年4月27日(水)10:00

(Myanmar/ミャンマー)

※本記事は3回に分けて掲載ています。
  本記事は第2話の掲載分です。
第1話はこちら> <第3話はこちら
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オー・エイ・エス株式会社
取締役 富田裕行様 
 

 
―御社事業にとって、ミャンマー進出のメリット、魅力はどのような点でしょうか?
 1点目として、優秀な人材が確保できる可能性が高いということです。現在就業しているミャンマーの社員は、採用してから1年半弱になります。優秀な人材なので期待はしていますが、システム開発者として一人前かというと、まだそのレベルには達していません。彼等が学んだ大学のコンピュータ学科では、IT教育といっても、数名で1台のPCを共有し、ほとんどが座学という教育環境だった為、実践的なIT技術が身についておらず、入社時点にて、期待していたIT技術スキルには達していませんでした。但し、最近はUITにおける学習環境が改善されてきているので、これから卒業する学生たちについてはIT技術スキルでも期待できると思います。
 
 2点目として、会社の規模に関わらず、優秀な人材を集めることが可能という点です。人材を募集する上で、会社の知名度は大切だと思いますが、弊社がミャンマーに進出するにあたって、これはチャンスだと思った点は、今、ヤンゴンで一番大きい日系IT企業は、300名近いミャンマー人を採用している日本では中堅IT企業だということです。日本では知名度が高くない会社でも、ヤンゴンでは大手の日系IT企業よりも多くの採用希望者が集まることを知ったからです。要は、日系IT企業はブランドですが、個々の社名での違いは気にしていないようです。
 
 人材を集めるには、オフィスの立地も重要になります。郊外の立派なオフィスよりも、市街地のオフィスの方が通勤が便利なので、社員からは喜ばれます。ヤンゴンは鉄道が発達していませんので、通勤にはバスを利用しますが、バスと言っても、多くは小型トラックの荷台に椅子がついているだけですから、乗り心地がとても悪いです。ヤンゴンは渋滞も激しいので、そのバスに乗って、毎日長時間かけて通勤するのは大変ですので、オフィスの場所は人材採用にも大きく影響します。
 
 他には、製造コストの低減により、日本市場で価格競争力が得られること、将来的にはマーケットとして捉えられるということです。ミャンマーの人口5,100万人、国土面積が日本の1.8倍というのは、ASEANの中でも悪くないと思います。
 
―ミャンマー事業を行う中で、課題に感じておられるのはどのような点でしょうか?
 
 主にインフラ面ですね。交通渋滞は日に日に激しくなっていて、移動するのに時間が計算できません。近い距離ならば、歩いたほうが早いということも良くあります。

 電気については、2年前に比べると停電も減って、改善してきていると思います。弊社では、開発作業にバッテリー付きのノートPCを使用しているので、停電になっても機械が故障することはありませんが、製造業などでは自家発電設備が必要になるので、投資額が大きくなると思います。インターネットは、光回線も提供されていますが利用料が高く、安い回線は利用者が増える時間帯になると通信が安定しません。インターネットをベースとしたクラウドシステムなどを常時使用するのは、まだまだ難しいと思います。

 水道は飲める水では無く、止まることもあります。オフィスやマンションの壁から水漏れすることもあります。オフィス事情に関しては、外国企業がオフィスとして快適に利用できる物件は少なく、家賃相場が非常に高いです。
 
 会計手続きなどにも課題があると感じています。決算報告などでも、会計事務所を通して行政の担当部局へ問い合わせをしても、状況を的確に把握することが難しいです。弊社の現地事業はまだ収益が発生していないので、税金を納める状況ではありませんが、正確に処理されているかどうか心配になることがあります。恐らく、行政当局において事務処理が急増しており、事務処理が追いついていないのではないかと思います。
 
  弊社は、日本法人よりOAS MYANMARへ融資(親子ローン)をしていますが、貸し出し手続き時には、ルールは無かったのですが、貸し出し実施後、ミャンマーの中央銀行より、親子ローンについては事前承認を得ていないと返済(海外送金)が認められない手続きへ変更となり、対応に苦慮しています。また、現地銀行の口座からの引出限度額に制限(1週間に5,000米ドルまで)があるので、多額の現金が必要となる企業では、どうように対応しているのか気になるところです。

 ミャンマーの行政については、担当者によって言うことが異なるケースもあり、イレギュラーな処理は誰に聞いても分からないことがあり得ます。
 
 もう一つの課題は著作権が保護されていない実情です。「本やソフトをコピーしてはいけない」という概念が薄く、市販の書籍なども、コピーが行われています。これは、日本との国民性の違いもあるのかもしれません。寄付の精神を大事にする国民性から来ているようにも思われます。

 企業向けソフトウェアだと、簡単にコピーして使うという状況にはならないと思いますが、個人向けの場合にはコピーが当たり前なので、個人向けで利益を生む仕組みを作る時には注意が必要と思います。
 
―ミャンマーにおけるIT分野人材育成はどのような環境ですか?
 
 UITなど、トップレベルの学校では環境が整っていますが、基本的に1クラスの人数が多く、教材、機器、先生が不足しています。UITでも、PCを使用した実践的な授業は少ないように思われます。
 
―御社のミャンマー人従業員への教育・育成に際して留意されたことや苦労されたことをお聞かせください。

 まず、ヒューマンスキルなどの教育がされていないということです。ミャンマーでは、家庭や学校で、時間を守る、挨拶をする等の基本的なしつけがされていませんので、しっかり教育する必要があります。

 弊社では、ヒューマンスキルの教育については、なぜ必要なのかも教えながら、厳しく指導しています。ヤンゴンは渋滞がひどいのですが、渋滞を考慮して出勤するように教えることで、現在では遅刻が無い状況になっています。

富田取締役(左)、太田取締役(右) 
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 ただし、時間に関しては日本人の感覚が厳しすぎるのかなと感じることもあります。経理等の業務についても、多少数字が合わなくても気にしないという現地の雰囲気があり、本社の経理担当者はストレスを感じることもあるようです。
 
 他に苦労しているのは、人材育成に時間がかかっていることです。弊社は日本語教育を重視しているので、そこが大きな壁になっています。ミャンマーの大学生は、基本的に英語は話せるので、就職先の希望国として人気があるのはシンガポールです。シンガポールでは、英語で仕事が出来て、IT企業で働いている先輩もいる。報酬は日本と同等か、それ以上です。

 そのような状況にあるので、弊社が寄付講座を実施する時に重視したのは、日本語をベースにIT教育を行うことでした。2~3年生の希望者に日本語を教え、4年生には日本語で実践的なITスキルを教える。しかし、日本語にて教育を受けられるレベルまで日本語を習得するのは難しいので、通訳を入れたりもしています。「ITを教育する」、「PCを提供する」だけでなく、日本や日本語に興味を持ってもらう取り組みも実施しています。

 現状としては、2014年9月に6名を採用してから1年半になりますが、そのうちの3名が、2015年秋に日本語検定のN3に合格しています。N3は日常会話レベルですので、日本語でITのドキュメントを理解できるようになるには、まだ少し時間がかかると思います。
 
 UITの学生たちの中には、ITを学びたいと思ってUITへ入学していない学生もいます。ヤンゴンでは軍事政権時代に大学が郊外へ移転しており、市街地にある大学は、UIT、外国語大学などで数校です。UITキャンパスはヤンゴンの高級住宅街にあり、入学希望者も多いです。ミャンマーでは、高校卒業時の全国統一試験の点数にて入学可能な大学が決まりますが、UITへ入学するために必要な試験の点数はトップクラスです。優秀な生徒の中には、「自分の成績で入学できて、通学しやすい大学だから」という理由でUITを選ぶ学生も多いようです。

 ですから、ITを学ぶということについて、強い希望を持っていない学生も含まれています。採用時でも同様ですが、「IT業界への就職を強く希望はしていないが、IT系の大学を卒業しているのでやってみようかな」という考えで応募してくる学生も見受けられます。強い希望を持ってIT業界へ就職する人は、少ないように思います。ただし、これからミャンマーが国策として、どれだけIT業界に力を入れていくかで、こうした学生達のIT業界への就職意識も変わってくると思われます。
 
 他に留意すべき点としては、ご両親からの干渉が挙げられます。UITの学生は約7割が女性です。優秀な男性は、留学などで海外へ出て行きますが、女性の場合、海外へ長期間出かけることをご両親が認めず、地元の大学へ進学するケースが多いようです。OAS-LAB(寄付講座)にて、IT実践トレーニングを受けている学生16名も全員女性です。大学の学長や先生も女性が多いです。そういう状況ですので、OAS MYANMARの社員も全員女性です。女性の場合は、ご両親からの干渉が問題になることがあります。

  弊社では、残業はほとんどありませんが、他社では、女子社員が19時くらいまで仕事していると、必ずと言っていいほど、家族から「何をしているのか?」と携帯へ電話がかかってくるそうです。残業で帰宅が遅くなるなら、仕事をやめるように家族に言われ、退職したというケースもお聞きしています。ミャンマーでは、ご両親とお坊さんの言うことは絶対と言われています。

  弊社がUITで実施している寄付講座は授業終了後の夕方に開講していますが、UITの学生寮は門限が18時30分なので、17時30分までに授業が終わらないと、寮の門限までに帰れません。門限に数回遅れると寮から追い出されるとのことで、寄付講座の受講生(入寮生)については、「講座を受けているので遅くなることがあります」と、大学から寮へ、特別にお願いしています。家庭の門限も18時半から19時が多いようで、それを理由に寄付講座の受講を断念した学生もいました。
 

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